小学4年生〜中学3年生が専門家と「宇宙」を探究。茨城県「NEXT SCIENCE LEADERS」の4日間


「研究者のように探究する」1日完結型の科学プログラム
茨城県教育委員会が主催する令和8年度サイエンスリーダーズ育成事業「NEXT SCIENCE LEADERS」が、2026年7月から9月にかけて茨城県立つくばサイエンス高等学校(つくばサイエンス高校)で開かれました。対象は茨城県内の小学4年生から中学3年生です。県内から集まった36名が、大学の研究者や専門家とともに、実験やものづくりを通して科学の世界を探究しました。運営は、茨城県教育委員会の委託を受けた株式会社Barbara Poolが担っています。
この取り組みは、昨年度に続いて茨城県教育委員会が実施する「サイエンスリーダーズ育成事業」の一環です。定員を大幅に上回る応募があり、応募者数は合計で約120名でした。今年度のテーマは「宇宙」です。ロケット工学、バイオテクノロジー、宇宙物理学、光と色の科学という異なる4分野から、それぞれ宇宙に迫りました。
各回は1日で完結します。専門家の講義から始まり、問いを立て、情報を集め、実験やものづくりで確かめ、最後に振り返ってまとめるという流れです。研究者が行う探究のプロセスを1日で体験できるよう組み立てられています。会場では、つくばサイエンス高校の生徒もメンターとして参加しました。小・中学生の実験やグループでの話し合いに寄り添い、世代を超えて科学の面白さを共有しています。

4つの分野から宇宙にアプローチ
1日目:ロケット工学「どうすればロケットを遠くまで飛ばすことができるだろうか?」
講師は、国立大学法人 九州工業大学 大学院工学研究院 宇宙システム工学研究系の前田恵介特任准教授です。子どもたちはロケットが飛ぶ仕組みや作用・反作用の原理を学んだうえで、ロケットの設計と製作に取り組みました。安全上の注意点を確認してから屋外で打ち上げると、歓声が上がりました。その後は、自分たちの設計と実際の飛び方を比べ、予想との違いや次に試したい工夫を振り返りました。
2日目:バイオテクノロジー「これからの宇宙生活と宇宙食は、どのように変化していくだろうか?」
株式会社MSD取締役で宇宙生活課題解決プロデューサーの浅野高光氏を講師に迎え、宇宙で人間が暮らすための課題を考えました。地球とは異なる重力環境が骨や筋肉、脳、腸内細菌などにどう影響するのかを、クイズを交えて学んでいます。グループワークでは、身体への影響や食事の課題を踏まえて、月面基地のあり方も話し合いました。参加者からは「宇宙に物を持っていくのに、1kgで1.5億円かかることに驚いた」「宇宙に行くと腸内細菌のバランスが変わることを知った」といった声が聞かれました。「宇宙飛行士が実際にどのような生活をしているのか、もっと詳しく調べたい」「無重力状態で水の表面張力や物体の動きがどう変わるのか、実験して確かめてみたい」という具体的な疑問も生まれています。
3日目:宇宙物理学「見えない粒から、宇宙のひみつを見つけられるだろうか?」
理学博士でサイエンスコミュニケーター、つくば科学教育マイスターの青木優美氏(ゆーみるしー)が講師を務めました。目に見えない素粒子と、それを調べる加速器の仕組みを学んだあと、子どもたちは「ガウス加速器」の製作と実験に挑戦しました。配線カバーに磁石を取り付け、磁石の力で球を転がして加速させる装置です。実験ノートには、鉄球、軽いビーズ、重いタングステン球のうちどれが最も速く飛ぶかを予想する項目もありました。磁石の数や位置を変えて何度も試し、速さを計測しながら、結果を変える条件を探りました。
4日目:光と色の科学「光の三原色で、宇宙を描けるだろうか?」
最終日の講師は、サイエンス・メディア・ラボの科学コミュニケーターである坂元眞一氏です。音や水の波の性質、光が何からできているのか、人がどのように色を見分けているのかを、ワークシートを使って学びました。扱った内容は、波の反射や干渉、光の波長、偏光などです。さらに手作りの簡易分光器で、青空や蛍光灯、白熱灯、LEDなどの光を観察しました。光を波長ごとに分けて見ることで、光源によって含まれる成分が異なることも確かめています。

「問いカード」で持ち帰る、次の探究のタネ
毎回のプログラムの最後には、「問いカード」を記入する時間が設けられました。その日の活動を振り返り、面白かったことや発見したこと、もっと知りたくなったことを、自分だけの問いとして書き留めます。答えを知って終わりにせず、新たな疑問を持ち帰って探究の続きを考えるための仕掛けです。
4日間を終えた子どもたちからは、次のような感想が寄せられました。
- 「初めて知ったことばかりですごくおもしろかった」
- 「物理学が一番楽しかったです。いろいろな分野を経験できたから、何が一番興味があるかを知ることができました」
- 「もっと鉄球を速くする方法を知りたい」
- 「ダークマターについて、もっと知りたい」
- 「つくばサイエンス高校に行きたいと思いました」
つくばサイエンス高校の設備や専門的な実験に触れたことが印象に残ったという声もあり、「もっとこういうイベントを開催していただけるとうれしいです」という要望も届いています。運営側は、体験をきっかけに一人ひとりの関心が具体的な疑問へと変わっていったことを印象的な点に挙げています。

事業の目的と開催概要
「サイエンスリーダーズ育成事業」は、つくばサイエンス高校を拠点に、小・中学生が専門家の指導のもとで「研究者のように探究する」体験を重ねる事業です。科学への興味・関心を深め、将来研究者や技術者として活躍する人材を育てることを目的としています。あわせて、つくばサイエンス高校の生徒が運営に参画して小・中学生と交流し、同校の魅力を広く発信することも狙いの一つです。
- 事業名:令和8年度 サイエンスリーダーズ育成事業「NEXT SCIENCE LEADERS」
- 主催:茨城県教育委員会
- 協力・会場:茨城県立つくばサイエンス高等学校
- 日程:2026年7月25日(土)、8月11日(火・祝)、8月23日(日)、9月5日(土)
- 対象:茨城県内の小学4年生〜中学3年生
- 参加者:36名(応募者数合計 約120名)
- 講師:前田恵介 氏、浅野高光 氏、青木優美 氏、坂元眞一 氏
- 運営:株式会社Barbara Pool(茨城県教育委員会からの委託により運営)












