中学生から大学1年までの18名の日本代表が、国際ロボット大会「FGC」で史上初の銀メダル 前年103位から決勝2位に


185の国と地域が参加する大会で、決勝2位の銀メダル
特定非営利活動法人教育の環(東京都目黒区、代表理事:鈴木健太郎)が運営する教育プログラム「Global Innovator ACADEMY(GIA)」の日本代表チームが、国際ロボット大会「FIRST Global Challenge(FGC)」で銀メダルを獲得しました。大会は2026年10月7日から10日まで韓国・仁川で開かれ、日本代表チームは決勝で2位に入りました。185の国と地域が参加するなかで、日本代表チームとして史上初の快挙です。ロボット設計の部門でも「張衡賞」の銅メダルを受賞しています。
現地に渡航したのは、GIAに所属する中学1年から大学1年までの生徒18名です。担当ごとに次の4つのグループに分かれています。
- ロボットを製作し、試合に出るロボティクスコースのナショナルチーム(NT)7名
- ロボティクスコースでNTを支えるエントリークラス3名
- 林野火災への解決策を提案するソリューションコース2名
- 外交と発信を担うアウトリーチコース6名
NTのうち試合に出る5名を「フィールドメンバー」、NT以外の11名を「サポートメンバー」と呼んでいます。GIAは一般財団法人三菱みらい育成財団の助成を受けて運営されている教育プログラムで、FGCに出場する日本代表を育成・支援しています。ロボットの製作から社会課題の研究、国際発信、資金調達までを生徒自身が担います。

山火事を題材に、「競争」と「協調」を両立させる大会
FGCは、世界課題を解決する科学技術分野の世界的なリーダーを育てることを目的とする米国の非営利団体FIRST Globalが、2017年から毎年開いている世界最大規模の国際ロボット大会です。国・地域ごとに1チームが代表として出場する「オリンピック形式」をとっています。2026年のテーマは「Igniting Innovation(火災との共生)」で、林野火災(山火事)が題材となりました。ロボットが火に見立てたボールを集める動作が消火を、試合の終盤に柱を登る動作が将来の火災への備えを表します。会場は松島コンベンシアで、185チームが出場しました。出場は原則1か国・地域につき1チームで、年齢は14~18歳です。
試合は3チームの同盟(アライアンス)で戦い、組む相手は毎試合入れ替わります。得点の一部は敵味方を問わず全チームに入るため、相手と点を奪い合うのではなく、みんなで山火事を抑え込むことが目標になります。各賞の審査では、他国にどれだけ貢献したかも評価の対象です。

修理・スカウティング・外交の役割分担で決勝へ
今大会のチーム戦略は「日本らしい和と協力・貢献を軸に、チームの総合力で勝つ」ことでした。フィールドメンバーがロボットに専念できるよう、各国との外交はアウトリーチコースが、他国のロボットの調査(スカウティング)はエントリークラスが受け持ちました。NTの藤井悠貴さん(ジョージア工科大学 学部1年)と菅家惟智さん(栄光学園高等学校 2年)は、GIAのコーチとともに他国のロボットの修理を担当しました。
2人とコーチは各国のピット(作業場所)を回り、同盟を組む予定のチームのロボットの修理や機構のバージョンアップを手伝いました。初めの2日間は申し出を断られることもありました。しかし3日目には、組む相手が強くなれば自分たちの得点にもなることが伝わり、自ら修理を頼んでくるチームも現れました。
サポートメンバーは、NTが競技に集中できるよう、日本のピットにむやみに近づかない決まりを徹底しました。エントリークラスを中心に各国のピットを回ってロボットの得意・不得意を調べ、専用に開発したスカウティングアプリにデータを集約しました。これにより、NTがいつでもデータを活用できる体制を整えています。エントリークラスは大会期間中の3日間で、185チーム中167チーム(90%)を調査しました。その間もアウトリーチコースの生徒たちは、各国との友好関係を深める外交活動を続けました。
予選は11試合で、全試合の平均点(ランキングスコア)で順位が決まり、上位24チームがプレーオフに進みます。チームは試合ごとに動画を振り返り、整備と操縦を見直しました。ペルー・エクアドルと組んだ同盟では、日本代表チームとして今大会最高の377点を記録しています。予選は10勝1敗の185チーム中14位で、史上初のプレーオフ出場を決めました。
プレーオフには予選上位24チームと抽選で選ばれた8チームが進み、4チームずつ計8つの同盟を組みます。決勝に進めるのは上位3同盟だけです。日本はアラブ首長国連邦・香港・ルクセンブルクと同盟を組みました。ルクセンブルクは、大会初日に日本がロボットの調整を手伝い、動きが良くなったチームです。日本の同盟はプレーオフ4試合の合計1,806点で8同盟中3位に入り、決勝に進出しました。3同盟で争われた決勝では2試合合計1,016点(506点・510点)を挙げ、史上初の2位を獲得しました。

前年103位からの機体づくり、そして次の挑戦へ
張衡賞(Zhang Heng Award for Engineering Design)はロボットの設計を評価する賞で、大会期間中の審査員による聞き取りで選考されます。前年の大会では、ロープを登る機構が初日に動かず、日本は103位に終わりました。この経験から、NTは壊れにくく確実に得点できる機体を目標に、約5か月の集中強化を重ねました。機体設計は藤井さんが担当しています。
林野火災への解決策を提案する部門「NTE(New Technology Experience)」にも参加しました。ソリューションコースのメンバーは、「もう消えた」と思った火が灰の下でくすぶる危険に着目しました。そして、残り火の温度をセンサーで測って知らせる仕組み「FireDock」を、火を使う祭りの主催者やキャンプ場の運営者に向けて提案しました。動画で応募する第1段階に参加しましたが、上位15チームが進む第2段階には届かず、現地では他国の発表を見学しました。このほか、SNSを使った国際発信で「Social Media Challenge Award」を、チームプロフィール動画で「Video Storytelling Award」を受賞しました。どちらも2025年の佳作に続き、2年連続の受賞です。
GIA学長でFGC日本代表チーム監督の鈴木健太郎氏は、今回の結果を「昨年のパナマ大会での103位という受け入れ難い悔しい結果を真正面から受け止め、再度挑戦し、やり抜いた生徒・コーチたちとご支援を頂いた方々の成果」と振り返りました。さらに「GIAとしては今回の結果は狙って出した結果です」と語っています。今後は今回の育成手法をさらにアップデートし、GIAのコンセプト「君を日本のトップに、そして世界一へ」をより実現するために、より様々な国際競技に挑戦していくとしています。現地を視察した京都精華大学教授の鹿野利春氏も、「適切な資金、場所、指導者を揃えて、正しい努力をすれば上位に行けるということ、日本もその適用範囲にあるということではないかと思います」とコメントを寄せました。
次回のFGC2027は、スペイン・マドリードで開催される予定です。GIAは2027年度のメンバー募集を予定しており、募集情報は2027年3月頃に公式サイトと公式noteで公開される予定です。












