高校生の探究記述1,000件を分析、「手が届く範囲に問いを絞る」記述は2.3% クアリアが「探究の質」研究記事を公開


「課題の質」を生徒の記述から読み解く
探究学習フィードバックシステム「Qareer(クアリア)」を運営する株式会社クアリア(東京都渋谷区、代表取締役:芦野恒輔)は、高校生が書いた探究の記述1,000件を分析した研究記事を公開しました。公開されたのは「探究の質とは何か:課題の質」と「探究の質とは何か:プロセスの質」の2本です。シリーズの続編となる「探究の質とは何か:成果の質」は、11月上旬に公開される予定です。
分析のきっかけは、2026年10月5日に中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会が公表した「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」です。審議まとめでは、探究の質を捉える視点として「課題の質」「プロセスの質」「成果の質」の三つが示されました。一方、学校現場では、生徒の設定したテーマや問いに「何か足りない」と感じても、どこが足りないのかを言葉にしにくい場面があります。同社も学校現場の先生と探究について話す中で、質の判断が先生個人の経験に委ねられやすく、質を高める関わり方も校内で共有しにくいという声を多く聞いてきたといいます。そこで同社は、「課題の質」を目の前の生徒の問いに当てはめる手掛かりを得るため、実際の記述の分析に取り組みました。
分析の対象は、Qareerに蓄積された高校生の探究に関する提出文章約2万件から無作為に抽出した1,000件です。1件あたりの文字数はおおむね700〜800字。質的コーディングによって記述に表れた思考・判断や成長への希望を75項目に整理し、項目ごとに定義と判定条件を設けました。そのうえでAIを使い、各項目を「確認できない/一部を確認/すべて確認」の3段階で判定しています。示されている数値は、判定条件を確認できた提出の割合(表出率、分母は1,000件)です。項目ごとに判定条件が異なるため、項目間の割合の高低は力の高低を示すものではないとされています。

三つの発見に見る、問いの立て方の傾向
経験や情報に触れることと、それらを根拠に問いを定めることは「必ずしも同じではない」と考察
一つ目の発見は、根拠をもとに問いを定める力に関するものです。条件の一部以上を確認できた割合と、すべてを確認できた割合は次のとおりです。
- 情報を組み合わせて、問いを絞り込む力:一部以上78.7%、すべて18.6%
- 自分の経験を、他の人にも当てはまる問いにする力:一部以上88.4%、すべて13.3%
条件の一部のみを確認できた提出は、それぞれ60.1%と75.1%でした。同社はこの結果から、経験や情報に触れることと、それらを根拠に問いを定めることは必ずしも同じではないと考えられるとしています。そのうえで、テーマが絞られているかに加え、どのような経験や情報を根拠にその問いに至ったのかに目を向ける必要があるのではないかと提起しています。
問いの対象範囲を定めた記述は34.9%、手が届く範囲に問いを絞っていた記述は2.3%
- 問いの対象範囲を定める力:一部以上62.1%、すべて34.9%
- 大きなテーマを、具体的な問いにする力:一部以上58.0%、すべて25.6%
- 手が届く範囲に問いを絞る力:一部以上11.5%、すべて2.3%
二つ目の発見では、3項目とも「一部以上」と「すべて」の割合に開きがありました。対象とする地域や集団などの限定、大きなテーマを具体的な問いにする過程、制約を踏まえて範囲を絞る判断について、それぞれの条件がそろった記述は限られていたといいます。同社は、テーマや問いが定まった後も「どこまで扱うか」が具体的になっているかを確かめる必要があると考えられるとし、自らが現実的に利用できるリソースや条件を考慮した上で、実際に何を、どこまで扱うかを考える必要があるのではないかとしています。
自分の関心や希望進路から問いを生んだ記述は49.3%、身近な人の困りごとを問いにした記述は3.1%
- 自分の関心や希望進路から問いを生む力:一部以上52.3%、すべて49.3%
- 日常の中の違和感を問いにする力:一部以上46.4%、すべて35.1%
- 身近なことと社会をつなげて考える力:一部以上39.8%、すべて29.8%
- 身近な人の困りごとを問いにする力:一部以上5.4%、すべて3.1%
- 見えにくい立場や見過ごされている課題を捉える力:一部以上3.6%、すべて0.9%
三つ目の発見では、「一部以上」と「すべて」の差が小さく、最大でも11.3ポイントでした。関心や進路希望などに触れた記述は、それがテーマにどうつながったかまで書かれていることが多く、一つ目・二つ目の発見とは対照的です。なお、3.1%と0.9%は特定の形の記述を捉えた項目の値で、他者への関心の有無を示すものではないと注記されています。同社は、社会に関わるテーマを扱うことと、その問題が誰にとってどのような意味を持つかを捉えることは別だと考えられるとしています。例えば「地域の活性化」をテーマにしても、住民と商店経営者では課題や目指したい姿が違うかもしれず、誰のどのような状況に応える問いかを考えることで、取り組む意味が具体的になると考えられるとしています。また、自分の関心から出発する問いと誰かの困りごとから出発する問いに優劣があるとはしておらず、自分の疑問を確かめたいという動機も「問いの意味」に含まれるとして考察しています。
指導の手掛かりと「プロセスの質」の分析
同社は教育現場への示唆として、生徒の問いに「何か足りない」と感じたときに確認したい二つの観点と、そのつながりを挙げています。
- 問いの意味:誰にとって、なぜ大切なのかが具体的になっているか。「何を見聞きして気になったのか」「誰の、どのような状況に関わる問いか」を確かめる
- 問いの中身:明らかにしたいことが、根拠に基づいて定まっているか。「何が分かっていて、何がまだ分からないのか」「使える時間や協力を得られる相手を踏まえ、どこまで確かめるのか」を見る
- 二つのつながり:取り組む理由と、調べる内容が噛み合っているか
もう一本の研究記事「探究の質とは何か:プロセスの質」では、同じ1,000件から探究の進め方に関わる11項目を取り上げています。例えば「仮説を立てて、何を調べるかを決める力」では、条件の一部以上を確認できた記述が46.6%、すべての条件を確認できた記述が9.8%でした。ここでは、「こうではないか」という見通しと、それを確かめるための調査内容・項目が書かれていることを確認しています。記事では「計画と達成基準」「調査設計」「情報収集」「試行と修正」の四つの観点から、活動が進んでいるかに加え、その活動で知りたいことを確かめられるか、結果を次の進め方にどう生かすかを説明しています。
本調査には鈴木寛先生がコメントを寄せています。鈴木先生は、高校で探究学習が本格的に始まってから4年が経ち、学校によって取り組みに大きなばらつきが見られるようになったと指摘。探究の質を高めることと、充実した実践をより広く届けることの両方が求められているとしています。今回の調査については、高校生が実際に書いた記述をもとに探究の質を高める手掛かりを示すものだと位置づけ、どのような探究に意味があり、どう取り組めばよいかが具体的に見えてくれば、これまで探究の意義や効果に確信を持てなかった先生方も一歩を踏み出しやすくなるはずだと述べています。
なお、分析にはいくつかの留意点が示されています。記述がないことを力がないこととは扱わないこと、1,000件は1,000人とは限らないこと、探索的な分析であり力の獲得や指導による向上は検証していないこと、設問や提出段階が記述の表れ方に影響しうること、Qareer導入校の提出であり高校生全体を代表しないことです。研究ノートは株式会社クアリア 共同創業者の平田正英氏が執筆しており、「課題の質」は2026/10/21、「プロセスの質」は2026/10/28に公開されています。
出典:株式会社クアリア












